SoF_L6-7
Documents complémentaires 誰が仲間か?
Les sentiments de solidarité en France et au Japon フランスでは、新卒社員が会社内でどのような地位 や職種に就くかは、その人がそれまでに受けてきた教 育の程度や内容などによって自動的に決まる。よって、 昇進や部署異動などによる、入社後の地位や職種の異 動も少ない。例えば、グランゼコール(フランス独自 のエリート養成機関)を卒業すれば、入社時からすぐ に管理職に就き、自分より年長で経験も豊富な人々で 構成されたチームを率いていくことになる。また、マー ケティングを勉強した人は、途中で会社を変えること があっても、たいてい退職までマーケティングの仕事 をし続けることになる。工場労働者も、普通はずっと 工場労働者のままである。 このような事情からも推測されるように、働く人が 仲間意識を抱くのは、同じ会社の人々ではなく、むし ろ同じ職種、同じ地位にある人々に対してである。ひ とつの組織内であっても、違う職種、違う地位の人々 に対する平等な仲間意識は低く、互いの主張が対立し ていることも少なくない。そのため、労働組合も、日 本のように企業別ではなく、職種別に組織されている。 工場労働者は、たとえそれが競合企業であっても、よ そで働く工場労働者に仲間意識を持つし、経営者は他 企業の経営者に親近感を抱くのである。もちろん、新 入社員の入社式や社員旅行などといった、会社全体の 結束を固め、社員間の親睦を深めるための行事などは ない。 逆に日本では、一般的に、たとえ高学歴の方が昇進 も速く、最終的に高い地位に就ける可能性が高いとし ても、少なくとも新入社員の時点では全員が平社員か ら始める。また、会社員人生を通してずっと同じ職種 で行くということはなく、社内でいくつかの違う部署 (マーケティング、営業、販売など)をまわって研鑽を 積む。このように会社内で一から始めて、様々な経験 を積むことで、会社に対する愛着が育まれる。確かに 最近では、終身雇用制度の揺らぎや転職市場の活発化 なども見られるが、一般的に日本人は、違う会社にい る同じ地位や職種の人たちよりも、地位や職種は違っ ても同じ会社に属する人たちに対してより強い仲間意 識を持っている。よって、社内における異なる地位・ 職種間の亀裂は、フランスほどひどくないが、そのぶ ん日本では、他の会社に対する競争心や対抗心が激し くなる傾向がみられる。
会社内の情報共有の仕方や意思決定の行われ方に も、フランスと日本では違いがみられる。フランス では、情報の共有がなされないまま、上層部のみに よって決定が下されることがよくある。日本でも、 もちろん最終的な決定は上層部によってなされる が、その前段階として、判断の材料となる情報を会 社全体からできるだけ収集し、事前に話し合いを重 ねることが多い。この過程には時間がかかるが、一 旦決定がなされれば、実行はかなり迅速になされ得 る。皆がその内容を知っているし、また背景にある 理由も理解しているからである。フランスでは、上 層部による決定は速いが、いざそれを実行する段に なると、長い時間がかかったり、途中で問題が持ち 上がったりすることが少なくない。実際に職務を遂 行する下層部の人々が、そもそも自分たちの知らぬ 間に下されていた決定の理由や目的を理解していな いからである。 スロー・スロー・ファスト・ファストか ファスト・ファスト・スロー・スローか? « Slow-Slow Fast-Fast » et « Fast-Fast Slow-Slow » : les rythmes de décision et de travail
48
© 2013 アルマ出版
Made with FlippingBook Ebook Creator