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La $%t'() ALMA ÉDITEUR

Novembre 2019

『アクティブに学ぶフランス語⽂法』 (2019年11⽉新刊)の著者インタビュー

文法の授業ではよくあることですが、 教員は終始しゃ べり続けざるを得ない 状況に陥りがちなのです。例えば 次のような場合が考えられます: • 詳細を極めた「ハイレベルな」教科書の場合、内 容を一から十まで説明したり、コンテクストに当 てはめてみたり、要約したりする必要があり、教 員の話は長くなる一方です。 • 逆に内容が非常に簡略化され、まとめの表などが 多く簡単そうな印象を与える教科書の場合でも、 それはそれで補足事項を説明しておかねばと話が 長くなりがちです。 そしてどちらにしても、練習問題はなかなか複雑なも のが多いのがふつうです。それは1つの練習問題に複数 の要点が詰め込まれてしまっているからなのですが、結 果として、絡まった要点を解きほぐすために説明を重ね ることになります。教員の話が長引けば長引くほど、学 生は眠気に抗えなくなってしまいます。

フランス語初心者向けの文 法教科書『アクティブに学 ぶフランス語文法』 が2019 年1 1月2 2日に刊行されま す。文法学習は受け身になり がちですが、本書は自分で考 えることを通して学ぶための 工夫がこらされた文法書と なっています。 今回はこの教科書のねらい について、著者にインタ ビューした内容をまとめて ご紹介します。 ̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶

• 著者:伊藤玄吾、亀谷百合佳、 Bruno Vannieu • ISBN:978-4-905343-26-4 • 本体価格:2,500円+税

● どのような タイプの授業に向いているか? 大学1年生向けの(主にコミュニケーションクラスと は別に行われる) 文法クラス に最適です。本書は本格的 な文法入門書ですので、通常の文法クラスで扱われる文 法事項は一通り網羅しています。その上で、よりアク ティブに文法学習に取り組める工夫が多く盛り込まれて います。 ● ⽂法の授業をアクティブに⾏うのは困難か? 確かに、文法の授業では膨大な知識を学生に伝える必要 がありますし、文法教員としてはどうしてもそれが最優 先事項となりますので、いきなりアクティブにと言われ ても難しく感じられるかもしれません。しかし、与えら れた知識を学生が消化しきれずに終わってしまうことが よくあるのが現実です。教員が知識を伝えようと言葉を 重ねることはできますが、学生が本当にそれを身につけ られるとは限りません。知識を会得させるためには、一 方的に話を聞かせるだけでなくアクティブに自分で考え させる学びが必要です。

以上のような問題意識を踏まえて、本書では学習過程 をいくつかのステップに分けることにしました。特に目 新しい教授法などを用いずとも、授業の進み方に違いが 出てくるはずです。 まず最初のステップとして、学生に「観察」させると ころから始めます。 数行のテキストに目を通して、指示 に従ってテキスト内の該当箇所を四角で囲んだり下線を 引いたりします。これは新出事項にとりあえず触れてみ ることで学生の頭に疑問を喚起させるために行います。 正解させることが目的ではありません。ここでは、学生

にとって馴染みのない文法用語を用いた説明は敢えて避 けてあります。

加えて、巻末にある「復習問題」を宿題などとして利 用できます。こちらの問題は全体的により応用的な内容 となっています。 ● 専⽤ウェブサイトの役割 ウェブサイト(grammaire-francaise.com)には、 • 音声トラック • より詳しい説明や補足的な文法事項(「 理解を深 めるために 」) • 動詞の活用表 があります。スマートフォンとパソコンの両方に対応し ています。 最近では、学生が授業へのパソコン持参を義務付けら れたり、教員が学習管理システム(LMS、例えばMoodle など)の利用を勧められたりすることも増えてきていま す。その場合は、このウェブサイト上の各課へのリンク をLMSの「今日の授業」等のページに貼ってもいいです が、ウェブサイトの構成は非常にシンプルなので、学生 に任せても問題なく各課にアクセスできるでしょう。 このウェブサイトの役割は教科書の内容を補完するこ と にあります。教科書だけでも基礎的な学習に支障はあ りませんが、ウェブサイトと合わせて用いることでより 学習効果が上がります。教科書が学習のメインで、ウェ ブサイトはその補助役です。我々はすべて「デジタル化」 してしまうのが最適なやり方だとは思っていません。実 際に手にとれる本があってこそ、ページをパラパラめ くって学習進度を実感したり、既習の内容にざっと目を 通したりすることができるのであって、1度に1つの ページしか映らないデジタルなスクリーンではそうはい きません。また、本ならページを繰るだけで簡単に他の 課を参照できます。実際に手を動かして書き込むことも 重要です。兎にも角にも語学学習に紙の本は欠かせない と考えています。 ● コラム「フランスの窓」の活⽤⽅法 「フランスの窓」はフラン スとフランス文化を様々な 面から紹介する短いコラム で、見て楽しい写真もつい ています。文法学習の息抜 きになりますし、フランス への何かしらの興味がわく ことでフランス語の学習意 欲向上につながればという 教育的意図も込められています。 授業中にコラムの内容について解説する他、学生に自分 で読ませておくだけでもいいでしょう。

次に、文法教員にとっては馴染み深い「説明」のス テップに移ります。 重要な基本事項は決して外すことな く、できるだけ説明が長くならないように内容を絞りま した。たった1度の説明で文法の隅から隅まで理解させ ようとしても、残念ながらドン・キホーテ的な試みにし かならないからです。 例えば、代名動詞を取り上げてみましょう。理論的に は、大きく2つの使われ方があります。1つ目は再帰代 名詞が直接補語の場合で、複合過去にする場合には過去 分詞が主語(より正確には直接目的補語である再帰代名 詞)の性数に一致するものです(Elle s'est couchée)。 2つ目は再帰代名詞が間接補語の場合で、複合過去にお いては過去分詞の性数一致はありません(Elle s'est lavé les mains)。 両方ともよく使われる重要な用法ですが、本書では 別々に取り上げることにしました。教科書内の課では、 一番基本的な1つ目のみを扱います(E l l e s ' e s t couchée.)。それだけでも、代名動詞の仕組みや意味、 否定形や命令形など理解すべきことが山積みであるの で、それに加えて再帰代名詞の直接・間接目的補語の区 別を求めるよりは、より単純なケースをまずはしっかり と学習してもらうことが重要だと考えるからです。2つ 目については、ウェブサイトの「理解を深めるために」 で扱います。学生はスマートフォンやパソコンですぐ閲 覧できますし、教員が授業中に説明したい場合はプロ ジェクターで映すこともできます。 以上のように、内容の優先度に応じて教科書とウェブ サイトに段階分けすることで学習効果が上がると判断し ました。優先度をつけるためにある文法事項を省いてお しまいにするのではなく、二段構えで重要事項を網羅し ています。 最後に、「練習」のステップです。 従来の教科書より も練習問題の量が多めになっているのは、できる限り、 1つの問題で1つの要点だけを扱うようにしたためで す。比較的速くこなせるのに加え、問題ごとに1つずつ 要点を確認し無理なく身につけられるようになっていま す。各課の「練習しよう!」の練習問題ではそういった 要点の血肉化に焦点を当てています。

2. フランコフォニー国際機関(OIF)主催のフランス 語教授法トレーニング(於:ベトナム) • “L’évaluation au service de l’apprentissage” • トレーナー:Bruno Vannieu / Bruno Jactat • 2019年7月9日~13日の 5日間、ダナン大学 • 約60人が参加

● 巻末「復習問題」内の「書き取り」の活⽤ 巻末の「復習問題」の各課の冒頭に「 書き取り 」として 数行のフランス語テキストがあり、2種類のスピード (ゆっくり、普通)で音声を聴くことができます。

「書き取り」の 練習問題として の有効性は言う までもありませ ん。聴き取りと つづりの確認に なる上、学習の まとめとしても

使えます。各課の重要事項が凝縮されたテキストになっ ていますので、ぜひ総仕上げとして活用していただきた いと思います。 例えば、「書き取り」の内容を家で予習させ、授業中に アクティヴィティまたは小テストとしてディクテーショ ンを行うというやり方があります。予習として、学生は 家で音声を聴き、テキストを自分で声に出して読み上 げ、そして書き写す作業を繰り返します。この際、 「ゆっくり」のスピードの音声がシャドーイングに役立 ちます。■ 教授法トレーニングと発表のご報告 アルマ出版代表の Bruno Vannieuら が本年度に行った 教授法トレーニン グと発表のご報告です。詳細はLaboMIのウェブサイトで ご覧いただけます(labo-mi.com)。 ● 教授法トレーニング 1. 第17回表現主体の外国語教育研究会 2019年9月29日(京都)及び10月13日(東京)に行われ ました。東京での研究会はあいにく台風19号と重なり予 定を変更して開催されましたが、京都では無事開催する ことができました。

3. Méthode Immédiateトレーニング(於:台湾) • “Enseigner la communication avec la Méthode Immédiate” • トレーナー:Bruno Jactat • 2019年10月28 日~11月5日、 文藻外語大学 ● 発表のお知らせ 第2フランス語教授法研究会 (Journée pédagogique de la langue française) • 「『アクティブ』な文法学習のための教材とは」 • 発表者:田村明子 / Bruno Vannieu • 2019年12月8日、東京国際フランス学園

フランス交換留学⽀援サイト 「Mon Avenir」がオープンしました!

フランス交換留学を目 指す学生に役立つ情報 を提供するウェブサイ

ト「 Mon Avenir 」(mon-avenir.jp)をオープンしまし た。大学入学後にフランス語の学習を始めた学生でも3 年次から交換留学に行けるよう、フランス語を身につけ るための繰り返し学習に使えるフラッシュカードや多読 用のリーディング教材を無料でご利用いただけます。さ らに交換留学に役立つ情報をまとめた資料をダウンロー ドして、印刷して学生にお渡しいただくこともできます。 例えば、「入学後1年半でDELFのB1を取得する計画を 立てよう」といった資料を掲載する予定です。その他に もご希望のトピックがございましたら、ぜひご一報下さ いませ(info@almalang.comまで)。■

『Moi, je ... コミュニケーション』 を授業で 使用したご感想 私が『Moi, je ... コミュニケーショ ン』を使ったのは、フランス語未習の 工学部1年生の同一クラスを週2回担 当したときでした。私の勤務校では、 週2コマのクラスのうち、1コマはネ イティヴ、あと1コマは非ネイティヴ の教員が担当することが多いのですが、 時間割の関係で非ネイティブの私が2 コマとも担当することになり、この教科書を使ってみる ことにしました。 学生たちの多くは、「フランス語の本を原文で読んで みたい」というよりは、「フランス語で会話してみた い」と考えてこの言語を選択します。『Moi, je ... コミュ ニケーション』では、 アルバイト、食べ物、部活、ス ポーツなど、必ず話したくなるようなテーマが選ばれて おり、さまざまなパターンの質問や答えの型を徹底的に 練習したうえで、各自の現実に合わせて会話を進めるこ とができる ように工夫されています。その年はたまたま フランス語選択者が多く、男子42人に女子1人という大 所帯となりましたが、フランス語を学ぶ楽しさを学生た ちが忘れずにいられたのは、この教科書のおかげも大き かったと思います。 森田直子先生 (東北大学)

ランス語で表現できたのは基本的なことにとどまりなが らも、自らも苦労して日本語を学んだ留学生たちからポ ジティヴな反応を得られたことは大きな自信になりまし た。■

外国語教授法シリーズの新刊ご紹介 『Enseigner lʼécrit au Japon』 Jean-Luc Azra(西南学院大学)による フランス語作文の教授法に関する書籍 『 Enseigner l’écrit au Japon 』が2019 年11月30日に刊行されます。Amazonで お求めいただけます。

● 外国語教授法シリーズ: 既刊の外国語教授法書籍も好評です。

著者:Bruno Vannieu 訳:池田 潤 ISBN:9784905343202 本体価格:1,500円+税

著者:Jerry Talandis Jr. 訳:作井 恵子 ISBN:9784905343196 本体価格:1,500円+税

著者:Stephen Richmond and Bruno Vannieu ISBN:9784905343288 本体価格:520円+税

株式会社アルマ出版 Site : www.almalang.com Email : info@almalang.com ———————————————————————— ● 代表の Bruno Vannieu よりご挨拶

文法の授業が他にあるわけではなかったので、『Moi, je ... コミュニケーション』だけでは不足しがちな文法説 明についてはプリント等を配布する必要がありました が、授業中はコミュニケーションを中心とし、発音や2 人組での会話の時間を多く取りました。日本人同士でフ ランス語を話すのは不自然だと考える方もおられるかも しれませんが、 そもそも言葉を交わす機会のなかった学 生同士がフランス語で初めて会話し、友達になるという のはおもしろい経験 だと思います。 ネイティヴの先生の授業がなかったことを少しでも補 うため、後期の終わりにグループ発表をさせ、聴衆とし てフランス人留学生数名を招待しました。学生たちがフ

私はこれまで 25 年以上、国立大 学や私立大学の様々なクラスで フランス語教育に携わって参り ました。この4月からは教授法 トレーニングとフランス語教育 に関する著作活動に専念してい ます。今後とも、日本のフラン ス語教育に貢献すべく一意専心 していく所存です。学会などで お会いした折には、ぜひお声掛 け下さい。

神戸大学に特任教授とし て在任時、6度のベスト ティーチャー賞を受賞。 著書に『 E n s e i g n e r l’oral au Japon』、共著 のフランス語教科書に 『Moi, je…コミュニケー ション』など10冊以上。

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